離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
覚えられていると思うと、途端に恥ずかしくなる。

わんわん泣いていたこともそうだし、大人の社交辞令を真に受けて本当に入職したと思われていたら……。

うつむいていると、ぽんと頭になにかが乗った。

笠原先生の手だと気づくのに時間はかからなかった。

「いい看護師になったな」

優しい声で囁かれ、思わず目頭が熱くなる。また泣いたら格好悪いので、顔を見られないようにうつむいた。

淡い憧れだった笠原先生が、自分を覚えていてくれた。

他の看護師には冷たいのに、私には柔らかく微笑みかけている。

ダメよ、勘違いしちゃ。先生には、婚約者が──って、どういう勘違いをしようっていうの?

まさか、私……笠原先生を意識している?

そう気づくと、余計に顔を上げられなくなった。

だって、絶対に真っ赤になっているだろうから。


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