離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~


看護学生の頃、私はこの病棟に実習に来ていた。

私の父は、私がまだ七歳のときに病気で亡くなった。弟が一歳のときだ。

ひとり親の母を助けるため、また弟の学費を稼ぐため、私は看護師の道を選んだ。

いつも学年上位にいる弟には、自由に進路を選んでほしい。

そのためにはお金が必要。私は確実に就職できて、自立して、さらにお母さんを助けられる道を選ばなくては。

そう考えていた高校生のある日、部屋の掃除をしていたら、幼い頃読んでいたナイチンゲールの伝記が出てきたのだ。

伝記と言っても、かわいい絵柄で書かれた学習漫画。私はそれを見て思い出した。

小学校のときの卒業文集の「将来の夢」の欄に「看護師」と書いたことを。

そうだ、看護師なら手に職ができる。離職しても結婚しても再就職先は星の数ほど。

病棟で頑張れば下手なOLより稼げるし、そうすれば母を助けられる。

そんな不純な動機で看護師を目指し、専門学校に入ったはいいものの、いざ病棟での実習になると後悔しかなかった。

学生を指導できる看護師は、ある程度キャリアを積んで研修を受けたベテランばかり。

当時、私がいた班を受け入れた循環器外科には、すごく怖い指導者の看護師がいた。

なんていうか、厳しいとかじゃなくて、自分の機嫌で他人への対応が変わるタイプの人だった。ちょうど三十歳くらいだったと思う。

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