離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
「俺と結婚してくれるなら、謝礼はたっぷり払う」
「たっぷりって」

誰だってお金は好きだろうし私だって嫌いじゃないけど、そのために愛のない結婚をするのはちょっと。

しかも怖い女の人の怨念を背負うような役柄だし。いくら笠原先生が相手とはいえ、気が進まない。

この話はお断りしようと口を開きかけたとき、笠原先生は私の言葉を遮るように早口で言った。

「きみの弟さんが希望の大学に入学して卒業するまでの費用を俺が肩代わりする。塾へ行くならその授業料も。それに、結婚生活に関わるすべての費用も俺が持つ」
「え」

弟の進学費用。私の奨学金。

そう言われると、心がぐらんぐらん揺れる。

正直そこが、我が家の一番の心配材料だったりするのだ。

笠原先生は、この前タクシーの中で私が実家を支え、弟を進学させるために看護師の道を選んだという話をしっかり覚えていたらしい。

「安心てくれ。一生きみを束縛する気はない。菜美恵が俺をあきらめ、ほとぼりが覚めたら離婚していい」

すっと頭が冷えていくのを感じる。

冷静に「離婚」という言葉を放つ先生の態度で、すべて理解した。

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