離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
期待を込めたような瞳で見られ、ため息が出そうになる。

どうしてこの女は、すべてを自分の都合のいいようにしか考えられないのか。

両親の圧が強く、言いなりになっているところや、事故で怪我をしたことは気の毒だとは思っているが、それ以上の感情はない。

兄は今、当時付き合っていた人と結婚できて、しあわせに暮らしている。

だが、菜美恵が事故に遭った当時のごたごたを俺は忘れていない。

うちの家族をひっかきまわした彼女を、好きになるはずもない。なぜそれをわかってくれないのか。

「もう何度も言っているが」

前置きだけで、菜美恵の眉が下がる。

同情を誘うような顔だが、俺は騙されない。

「きみと結婚することはできない」
「どうして?」

食い気味に言う菜美恵は、行き場をなくしたコーヒーカップをケトルの横に置いた。

どうしてじゃないだろ。

まるでまだ話せない幼児と会話しているようで、イライラが募る。

「他に好きな人がいる。その人と結婚することになった」

聞こえないフリをされないよう、ハッキリと言った。

すると、さすがの菜美恵も顔が青くなった。

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