筋肉フェチ聖女はゴリラ辺境伯と幸せを掴む

vsゴリラ

「……ブレイズ様!」

 ブレイズ様はゴリラの姿のまま、肩に担いでいた女性をポイっと芝の上に投げ捨てた。……待って。見るからに高価なドレス纏いぐったりしているその女性、状況的にメルエー国の姫であるアドラ様なのでは?
 
「アドラ!?」
「和平条約上、面倒な事になるから息はある。まぁ、ローズを返さぬなら、こんな胸糞悪い幻影魔法を使う女など殺してもいいが」

 どうやらアドラ様は気を失っているだけのようだ。良かったと思うと同時に、遠隔でアドラ様まで回復魔法を飛ばすように命じられる。私の体がレオン様の言う通りに動く様を目の当たりにしたゴリラはその目を見開いた。

「ローズ、まさか……」
「残念ながら、お前の婚約者は私の傀儡に成り下がったのだ。辺境伯と言えども、王子である私には逆らえぬだろう?」

 レオン様はまるでブレイズ様を見下し揶揄うかのように私の肩を抱き、もう片方の手で赤薔薇の形状の水晶を見せびらかした。

「……ごめんなさい。短い間でしたが、ブレイズ様と一緒に過ごした日々は楽しかったです」

 私は視線を下げ、謝る。とてもその目を見て発言するだけの勇気は無かった。
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