女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に
樹里と2人で、下のロービーまで降りる際も、ホテルマンがついてくるあたり、父により厳重体制がひかれたようだ。よほどのことがない限り、お客様のプライバシーは守るホテル側だ。
あの日から一カ月ほど経ったが、玲央からの連絡はまだない。
2週間に一度くらいの頻度で顔を合わせていたというのに、出席したパーティーのお供は理央か千紘で、2人に玲央のことを聞くのも怪しまれそうで何も聞けないままだった。
「樹里…ちょっと…」
樹里に玲央の様子をそれとなく聞こうと部屋に入ったら、着替えの途中だったらしく目に入ったものに驚いてしまう。
私より先に、樹里は誰かと初体験を済ませ、愛されてる印を体につけている。
戸惑いよりも羨ましさが勝っていた。
自分達は、強要されたわけじゃないが、久世家の為になる結婚という思いに縛られていたはず。
それなのに樹里は、いつのまにか、愛される喜びを知り、自由に恋愛を楽しんでいたのだ。
「うわー、ないわ。何⁈その独占欲。怖いんだけど」
兄妹の真ん中で、一番、素直で静かな樹里が、自分よりも先に経験を済ませ、久世家の為という縛りから抜けていた。
自分ができないでいる行動力が羨ましかった。
「えっ?」
「見てみなよ」
合わせ鏡で見せ、うなじや背中にあるいくつもの痕に樹里も驚いている。