元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 医師の説明を受け、同意書にサインをする母を見守った。
 それから、手術室の前にある待合室で、ただ父の無事を祈るだけの時間が過ぎた。

 抱っこしたまま寝ている颯麻が時折身じろぎ、その度に『生』を実感した。
 母はそんな颯麻を愛おしそうに見つめ、「大丈夫よね」と気丈に呟く。

 大丈夫、大輝が繋いでくれた命だから――。

 そう思っても、口には出せなかった。
 けれど、どうしてか私の胸の内は凪いでいた。
 きっと、彼のおかげだと思う。

 手術が終わる頃には、日が昇り始めていた。
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