元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜

8 かけるべき言葉を探して

「おぱよ……」

 むにゃむにゃしながら朝の挨拶を告げる息子に、少しだけ場の空気が和んだころ、看護師さんから呼び出しを受けた。

「手術は無事終了しました。頭部からの出血量が多かったので、頭蓋骨を削り――」

 脳外科医だというお医者さんの説明は的確で、わかりやすくて、でも淡々としていた。
 父は今、ICUにいるという。

 高血圧からくる脳出血であること、倒れてからの時間が経っていたため出血量が多く、一命はとりとめたものの大きな後遺症が残る可能性を示唆された。
 言語障害や、右半身が付随となる可能性を提示され、母はまた顔色を悪くする。

 颯麻は腕の中で「ごはん、食べたいなー」なんて呑気に発言するものだから、看護師さんたちは笑う。

 けれど、その後コーディネーターさんと話しても、息子に朝ご飯を食べさせるために早朝のファーストフードに寄っても、母はぼうっとうつろな瞳で、どこか張り詰めたような顔をしていた。

 私はまだ、そんな母にかける言葉が見つからない。
 だから、せめて少しでも、母を一人にしたくないと思った。
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