愛より深く奥底へ 〜救国の死神将軍は滅亡の王女を執愛する〜
 武器商人と密接な関係をもった奸臣はハリクスに囁いた。
「なければ隣国から奪い取れば良いのです。陛下が救国の覇王となり、歴史に名を刻むのです」
 奸臣にしてみれば国民などどうでもよかった。戦争となって国が武器を買い上げれば武器商人からの賄賂が増える。その算段がすべてだった。
 翌年、準備を整えたランストン王国軍はティスタール共和国に攻め入った。
 宣戦布告もなく開始された戦争であり、ランストン王国は最初、優勢だった。
 ふいを突かれたティスタール共和国は、すぐに体勢を立て直して応戦した。
 ティスタールは一歩もひかず、膠着した。



 ヒルデブラントはこれを好機と考えた。
 戦功を上げれば階級も上がる。つまりは力を得られる。
 上官に戦地への志願を申し出た。
 だが、却下された。
 ハリクスに便利な犬を手放す気はなかったのだ。
 戦況は徐々に悪化していった。
 


 暗殺を指示する一方で、ハリクスは暗殺を恐れた。
 替え玉を用意している噂もあった。入念に隠し通路を確認しているともいう。
 ハリクスならやりそうだ、とヒルデブラントは思った。
 彼は常に近衛に警護させ、執務室へも入室させるほど警戒していた。
 だから、ヒルデブラントはそのときその場に居合わせた。
 戦局の報告を受けたハリクスは、男をなじった。
「そのような報告はいらん! 良い結果だけをもって来い!」
 ヒルデブラントはハリクスを見下げ果てた。
 現実を見ようとせず、対策を講じない。このような人物ならば、エルシェに関係なくいずれ滅びただろう。
 だが、ハリクスはそうは考えなかった。目を暗く光らせ、うなるようにつぶやく。
「あいつが滅びを呼んでいるんだ。あいつを処刑すれば好転するに違いない」
 ヒルデブラントは愕然とした。
 ハリクスがエルシェを処刑しようとしている。
 なんとか止めなくては。
「お待ちを」
 思わず口を出していた。政治の話に近衛が口を出すなど、ましてや国王の許可なく発言するなど、それだけで処罰されかねないのだが。
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