愛より深く奥底へ 〜救国の死神将軍は滅亡の王女を執愛する〜



 ヒルデブラントは晩餐への参加と王城への一泊を許された。
 辞去したかったが実質の命令であり、断ることなどできようはずもなかった。
 晩餐を終え、用意された部屋に行く。
 男性用のブリオーを脱いだ彼はチュニック姿のまま、ベッドに掛けてエルシェのことを考えていた。
 夜中、ひそやかにドアがノックされた。
 ドアを開けると、マントを深く被った人物がいた。
「内密で話があります」
 女の声には覚えがあった。
 供も連れず、一人での訪問にいぶかしく思うが、そうまでして来る理由が気になった。
 ヒルデブラントは彼女を招き入れた。
 部屋に入ると、彼女はマントを脱いだ。
 マデリエだった。
 国王より十も若い彼女はまだ三十代の半ばであり、女ざかりだ。
 薄い夜着に豊満な胸の谷間を覗かせ、先端がつんと立っているのが布越しにもわかった。
 彼女は蠱惑的にヒルデブラントの瞳を見つめた。
 ヒルデブラントは自らの過誤を悟って目を背けた。色事に疎い彼は、彼女の目的を見誤ったのだ。
「美しい顔立ちだこと。金銀妖目、神秘的だわ」
 マデリエは彼の頬に手を伸ばし、自分に向けさせた。ねっとりと見つめ、自身の唇を舐める。
「冷徹で女に興味がないという噂でしたのに、あんな小娘を望むなど」
 ヒルデブラントの頬を、マデリエの指が煽情的に撫でる。そのまま首筋を撫で、胸板を撫でる。
「この逞しい胸に焦がれる娘も多いでしょう」
「ご用件は」
 彼は一歩を下がって手を逃れる。
「わかっているくせに」
 マデリエは嫣然と微笑む。
「わかりかねます。用がないのでしたらお帰りを」
「……陛下はあの娘を与える気などないわ」
 ヒルデブラントは眉をひそめた。
< 29 / 41 >

この作品をシェア

pagetop