ビターなフェロモン (短)

ザアア――と登校時と同じように激しく振る雨。

この雨のせいで湿度も上がり、体感気温は30度超えている。


「暑すぎると、甘いチョコはいらないよな」


それならビターでちょうどいいかもしれない。

桃子の口に合いますように。少しでも、桃子が喜んでくれますように。


願わくば、ビターなフェロモンじゃなくて、


俺じゃなくて――


「皐月なら甘く、マイルドにしてやれるんだろうな。……悔しいけど」


フッと自嘲気味な笑みを浮かべたところで、どうしようもない。

幼い頃から桃子は皐月一筋だし、俺の入る隙はなかった。

だから――


「悪かったな、桃子」


フェロモンの行く先一つで、お前は笑顔にもなれただろうに。


「相手が俺で、ほんとにごめんな」



*蓮人*end


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