ビターなフェロモン (短)
伸ばした手の先に





私が特異体質だと知った日から、三日が経った。

蓮人くんが私に触れないようにしているおかげで、あの日以来フェロモンは出ていない。

だから以前のような、平和な日常が送れているのだけど……


「う~ん……」


私が言うのもアレだけど。

最近の蓮人くんは前とはどこか違っていて……何か違和感がある。


例えば、登下校の時に私が石に躓いて転びそうになった時に、サッと助けようとしてくれたり(もちろん肌と肌が触れあわないように)。

でも……助けてくれた割には、


「くそ、また体が勝手に」とか言いながら、ため息をつきながら去って行く。


どうやら頭では「私と関わらないようにしている」のに、無意識に助けてしまうらしく……。

蓮人くんは私のフェロモンに対し、並々ならぬ気を遣ってくれていると分かる。それはもう、申し訳ないくらいに。
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