彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】
「菜摘、お前ずるいぞ。いつからそういう女になった。実家から通うとか卑怯だ。お前こそ、俺と離れて暮らせるのか?」
「え?」
私を下にして抱き込む。
「もう無理だな。菜摘はどんなときも俺とは離れられないんだよ。見えない鎖で繋がっているんだ」
耳元でそう言うと、いつものように私の身体をなぞりはじめた。
逃げようとしても無駄。彼は私の感じる場所を知り尽くしている。なぞる指に感じている私を見ると、嬉しそうに顔を伏せた。
彼の本格的な愛撫がはじまった。今日も彼に翻弄されてしまう。そう、彼の言う通り、私は身体もすでに籠絡されている。
* * * *
それで、朝から何を喧嘩しているかといえば、その会社を移る転籍の問題だ。
氷室商事に戻るため、彼は大きな契約をしようと準備中。しかも近いうちに海外出張の予定もある。