彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】
そして、その出張で商談がうまくまとまれば、近いうちに戻れるかもしれないと言っていた。
戻る、つまり彼が氷室商事へ移るときは、私を連れて行くと最初から言い切っていた。だが、私は正直行きたくない。
このミツハシフードサービスという会社に愛着もあるし、フード業界だからこそ入社したのだ。
ここは実家の喫茶店と取引があった関係で、取引の担当者から誘われて入社した。
それに一番大事なポイントは私の知識はフード関係しかない。それなのに、彼の会社は総合商社。そこへ知識のないものが転籍して、すぐに役員秘書なんて出来るわけない。
彼は元々あちらに数年いたのだし、家業だから当たり前だが知識がある。
私は全く知らない業種。突然仕事を任されてもわからない。しかも役員秘書なんて絶対無理だ。会社の業務を知り尽くさないと恐怖でしかない。