イルカの見る夢
その瞬間、斗李は息を止めた。
目を見開き、笑いとも嗚咽ともつかない声が漏れる。
「……っ、あぁ……真凛……っ! 聞こえたよ……やっと、聞こえた……!」
それは、欲しくて欲しくてたまらなかった言葉。
彼女が口にしなかった斗李に対する本音が、確かにそこには記されていた。
「君は僕を受け入れる気でいたんだ……迷ってたんじゃない……怖がってたんじゃない……! 君だけは、僕のそばにいようとしてくれたんだ……! そうだろう、真凛!」
斗李の肩が震えている。
長年探し続けた鍵を手にした子どものように、彼は何度もその文章を読み返しながら、狂ったように泣き、笑った。
「あぁ、もういい……もう、何もいらない……君が心から僕を欲してくれた……それだけで、すべて報われるんだ……!」
東は、表情ひとつ動かさず、泣き崩れる主人の様子を黙って見つめていた。
その向こう側の画面の中で、真凛が太陽のような輝かしい笑顔を浮かべていた。ルビーと共に、水しぶきの中で。
それは決して斗李には向けられていない笑顔であり、見たこともない、彼女の心からの笑顔だった。
――けれど斗李はそれすらもう、区別できていない。
彼にとって、〝彼女を知ること〟が〝ふたりの愛〟だから。
今の彼は、世界のすべてを手に入れたと確信し、幸せの絶頂の中にいた。
END.
目を見開き、笑いとも嗚咽ともつかない声が漏れる。
「……っ、あぁ……真凛……っ! 聞こえたよ……やっと、聞こえた……!」
それは、欲しくて欲しくてたまらなかった言葉。
彼女が口にしなかった斗李に対する本音が、確かにそこには記されていた。
「君は僕を受け入れる気でいたんだ……迷ってたんじゃない……怖がってたんじゃない……! 君だけは、僕のそばにいようとしてくれたんだ……! そうだろう、真凛!」
斗李の肩が震えている。
長年探し続けた鍵を手にした子どものように、彼は何度もその文章を読み返しながら、狂ったように泣き、笑った。
「あぁ、もういい……もう、何もいらない……君が心から僕を欲してくれた……それだけで、すべて報われるんだ……!」
東は、表情ひとつ動かさず、泣き崩れる主人の様子を黙って見つめていた。
その向こう側の画面の中で、真凛が太陽のような輝かしい笑顔を浮かべていた。ルビーと共に、水しぶきの中で。
それは決して斗李には向けられていない笑顔であり、見たこともない、彼女の心からの笑顔だった。
――けれど斗李はそれすらもう、区別できていない。
彼にとって、〝彼女を知ること〟が〝ふたりの愛〟だから。
今の彼は、世界のすべてを手に入れたと確信し、幸せの絶頂の中にいた。
END.