イルカの見る夢
すると瞼を閉じたままの斗李が、真凛の体をきつく抱きしめ返す。
てっきり起きているのかと思いきや、彼は寝息を立てながら目を閉じており、無意識のうちに彼女を求めているようだ。
体がびくともしないほど斗李に抱きしめられ、真凛は困ったように微笑む。
「赤ちゃんができたらこんなふうにできなくなりますよ」
聞こえていないと分かっているが彼女は冗談めかして彼に諭す。
ふたりは毎晩休まずに子づくりに励んでいるので、いつコウノトリが来てもおかしくない。
幸福に満たされながら夢の世界に傾く真凛とは違い、斗李はかすかに指を動した。
「真凛、子供ができたら僕を放っておく気かな?」
「と……斗李さん、起きてたんですか」
「聞き捨てならない言葉が聞こえてきたからね」
冗談ぽい口調でそう告げた斗李の瞼はよっぽど眠いのか、まだ硬く閉じられたままだ。
「起こしちゃってごめんなさい」
真凛が謝ると、彼はくすくすと静かに笑う。
「冗談だよ、真凛。そういえば、ルビーで思い出したんだけど……来月オープンするアクアリウムの名前、まだ伝えていなかったよね」
「はい。なんていう名前に?」