たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
鉄で出来たレール。
その上にあるのは同じく鉄製のタイヤと軽さ重視の木箱だ。
お尻には丸く管が通っていて,加速を助けるための燃焼材が入っている。
(本来私が補充したり燃やし続けたりして使うものなんだけど。……ま,いいでしょ。一直線の下り坂だもの,行きだけならトロッコとして機能するように出来てるわ)
「お姉さん,ほんとにすごいのね……」
「何を惚けてるの。急ぐんでしょう」
お尻の管の上に通るワイヤーは,後から40分の距離からトロッコを回収するためのもの。
後ろの支柱に繋がって今は固定されているそれを,私は少しずつ緩めた。
自分の手で緩めたワイヤーを押さえている間に,まだ少し怖がっているその子を乗せる。
(こんな下り坂を,魔法まで使って下りるなんてさぞ怖いでしょうね)
だけど構わない。
こうすればもうここへ来ようとは思わないだろうし,私から1種の嫌がらせでもある。