たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~

鉄で出来たレール。

その上にあるのは同じく鉄製のタイヤと軽さ重視の木箱だ。

お尻には丸く管が通っていて,加速を助けるための燃焼材が入っている。



(本来私が補充したり燃やし続けたりして使うものなんだけど。……ま,いいでしょ。一直線の下り坂だもの,行きだけならトロッコとして機能するように出来てるわ)



「お姉さん,ほんとにすごいのね……」

「何を惚けてるの。急ぐんでしょう」



お尻の管の上に通るワイヤーは,後から40分の距離からトロッコを回収するためのもの。

後ろの支柱に繋がって今は固定されているそれを,私は少しずつ緩めた。

自分の手で緩めたワイヤーを押さえている間に,まだ少し怖がっているその子を乗せる。



(こんな下り坂を,魔法まで使って下りるなんてさぞ怖いでしょうね)



だけど構わない。

こうすればもうここへ来ようとは思わないだろうし,私から1種の嫌がらせでもある。

< 12 / 238 >

この作品をシェア

pagetop