たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~


「エヴィー。前も変だって言ってたよね,君。その絵本がそんなに特別? 良くある話じゃなかった?」



ノアが近づいて,私に優しく尋ねる。

ようやく言葉になった私の違和感を,私は少しずつ皆に話すことにした。



「このお話,変なところが沢山あるの」



そう,感情移入できない変なところが沢山ある。



「だってこのお話じゃ,どうして魔女が嫌われていたか分からないの。ただの力の強い女の人って感じで。
それに,確かにbarを燃やしちゃったのは良くなかったかもしれないけど,魔女は男の人を愛していたんでしょう? 先に悪口を言って手を出したのは,酔った男の人じゃない。魔女だけが悪者になるのは,絵本にしては子供に良くないじゃない」



(これが実際にあった出来事を書き起こした話なら,尚更。魔女はどれだけ悪く言われても,決してやり返したりしてないのに。馬鹿にしたり悪く言うような表現ばっかり)



「お店の人も,2人の入店を許していたのに。兵士が直ぐにやって来たのも,強いはずの魔女が人間にあっけなく倒されたのも,ずっと見つからなかった魔女の住む村が見つかったのも,全部変だと思うの」

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