たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
はにかんで向けられたその問いに,私は数秒だけフリーズする。
「エヴィー,あなた師匠と恋ばなしようとする弟子がどこにいるのよ。年だって近くみえる?」
(このケーキも,ゆったりとした時間も。それを聞き出すためのものってことね)
「おばさんって程じゃないでしょ? お姉さんって位で,寧ろ私より真面目に恋愛する年じゃない?」
(それもそう,ね)
今頃結婚願望のある同級生は皆焦りだしている頃だ。
話題を避けようとしただなんて思われたくなくて,私はこほんと咳払いをした。
「もういいわ。でも,好きなひとがいるのは私じゃなくてあなたの方でしょエヴィー。聞いてあげるから」
誘導すると,エヴィーはまたはにかんだ。
「えへへ,バレちゃった? あのね,パ……あっううん。いつもいる友達の一人でね,ダニーって言うんだけど」
他人に打ち明けるのは初めてなのかもしれない。
そんな緊張感とときめきに,私まで当てられてしまいそう。