追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

 ソフィアさんと階段を駆け降りた。すると、扉の外にたくさんの人影が見えた。そして、ソフィアさんが扉を開いた瞬間、午前のようにどっと人が溢れてきた。

「ソフィア様、助けてください!うちの子が!!」

「熱が高くて死にそうです!」

「手が動かなくなってきたわ!!」

 不安に駆られる人を温かく迎え、絶対に治そうと決意する。話を聞き、患部を診て触れて、的確な治療を選択する。

「あぁ、新しい薬師様!」

 いつの間にか、私も患者に認められていた。これも全て、ソフィアさんを見ていて大切なものに気付いたからだろう。その患者は高熱にうなされながら、必死に言葉を紡いで教えてくれた。

「あなたの評判は……街中で広まっています。
 あなたは……神様からの贈り物です」

「……え?」

 状況が理解できないが、どうやら私は神様からの贈り物になってしまったらしい。胡散臭いニセ薬師から考えると、かなりの出世だ。一体、どうしてしまったのだろう。
 
 その時扉が開き、午前中に治療した人々が入ってくる。みんな揃って顔色が良く、明るい表情をしている。

「アン様、ありがとうございます!!わしは歩けるようになりましたぞ!」

 杖をついていた老人が、すたすたと歩いている。心なしか、背筋もピンと伸びたようだ。

「この子、熱が下がりましたの!」

 ぐったりしていた子供も、今や元気に跳ね回っている。

「私は熱が下がったけど、手足も動くわ」

 合併症を心配した女性も熱が下がり、元気そうにしている。生きる気力を失った人が、こんなにもいきいきしている姿を見ると嬉しくなる。治療をして良かったと、心から思った。

「そうそう!アン様って、ジョセフ様のご病気を治したかただったんですね!」

「えっ!?じょ、ジョセフ様!?私知りません!!」

 かろうじてそう告げるのが精一杯だった。なんだか頭がくらくらする。まさか、ジョセフ様って……

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