追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
そんななか、ガチャッと扉が開かれるのと同時に、
「アンちゃん!」
元気になった中年の男性が私を呼ぶ。その男性は、なんだか困った顔をして、言いにくそうに私に告げるのだ。
「街の若い男で、アンちゃんのことを酷く気に入っている人がいるんだよ。
もし良かったら、アンちゃんを紹介して欲しいって」
「えっ……」
頭に浮かんだのは、もちろんジョーだ。私は間違いなくジョーに恋している。だけど、結ばれない恋なのだ。
男性は、申し訳なさそうに続ける。
「でも、アンちゃんにはジョセフ様がいるから……万が一紹介したら、俺はジョセフ様に殺されるから……」
この男性の言葉は、
「紹介だと?」
ジョーの、怒りに満ちた言葉にかき消された。慌てて階段のほうを見ると、めらめらとどす黒い炎が見えそうなほど怒っているジョーがお茶を持ったまま立っている。さきほどまでの、ピンクで浮かれたジョーとは別人のようだ。
「じょ、ジョセフ様……も、申し訳ありません!!」
男性は青ざめて震え上がるが、ジョーの怒りは治まらなかった。お茶が乗ったお盆を片手に持ったまますたすたと男性に歩み寄り、左手で胸ぐらを掴んでドンと壁に押し付けた。
「アンは他の男に渡さない」
それ、どこまで本気なのだろうか。ジョーだって、好き勝手私を誑かせておいて、いつかポイするに決まっている。だって私は、平民だから。