追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる



 やがて、ジョーは屋上に辿り着いた。明るい光が急に押し寄せ、目の前が真っ白になる。そしてそれが次第に晴れてくると……目の前には、遠くまで続く街とその向こうの緑の平原、さらにその奥の山々が見えた。
 初めて見るオストワルの街は、とても壮大でとても美しかった。私はこの街が好きだと心から思う。美しくて温かい、この街が。

 ジョーはそっと私を地面に下ろし、後ろからぎゅっと抱きしめる。離してくれたと思ったのに、また捕えられてしまった。私の鼓動は高鳴りっぱなしだ。



 ぎゅっとされたまま、耳元でジョーが話す。

「俺はあの山の中で、アンに会ったんだ。
 アンに会ってから、俺はいろんなことを学んだ。女性には興味がなかったが、アンには初めて添い遂げたいと思った」

「何言ってるの。……私がジョーを助けたからでしょ?」

 必死に呑まれないように抵抗する私だが、これも無駄な抵抗に終わるのだろう。
 ジョーは私をぎゅっと抱きしめたまま、続ける。

「俺は、アンが薬師としてプライドを持っているところや、患者を絶対に見離さないところも尊敬している。
 街の人とも仲良しで、誰もがアンと話をするのを楽しみにしている。
 アンは、俺が持っていないものをたくさん持っている」

 まさか、ジョーが私のことをそんな風に見てくれていたなんて。尊敬だなんて、とんでもない。だけど、ジョーにそんなことを言われてにやけてしまうのも事実だ。
 だけど言われっぱなしの私は、反撃に出た。ジョーにもいいところはたくさんある。ジョーには分かって欲しい……

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