追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

「上れるか?」

ジョーは言う。私はスカートの裾を持ち、一段一段気をつけて階段を上がる。正直、あの天辺の明かりが漏れているところまで辿り着く自信はない。

 戸惑っている私を、ジョーは軽々しく持ち上げた。不覚にもジョーにお姫様だっこをされている形となり、真っ赤になってしまう私。間近でジョーの顔を見て、さらにドキドキする。

「あの……上れるから離して!」

 真っ赤な顔で告げる私を、甘い瞳で見下ろすジョー。

「やっぱり、お嬢様に上らせる訳にはいかないな」

「お、お嬢様じゃないって!」

 慌てて告げる。
 貴族のジョーにお嬢様だなんて言われたら、からかわれているも同然だ。私はただの平民なのに!

 ジョーは軽々私を持ち上げたまま、ゆっくり階段を上がる。ふふっと楽しそうに笑いながら。

「その余裕の笑いが憎いんだけど!」

 頬を膨らませて悪あがきすると、

「余裕ではない」

 ジョーは口元を歪めて静かに告げた。

「え……」

「俺は全然、余裕ではない」

 ジョーは何を言っているのだろう。こうやって私を抱っこしたりしても、ドキドキなんてしないくせに。甘い言葉で女の子を誑かすのも、慣れているのでしょう?

 だけど……階段を見上げるジョーの頬は赤くて、口元はきゅっと閉じられていて……

「あっ、あの!
 私が重いから、私を抱えてこの階段を上るのが余裕ないんだよね!!」

 必死で理由を考える。
 そうだ、きっとそうに決まっている。いくらジョーほどの強者とはいえ、この階段を女性をかかえて上がるのは辛いだろう。

 ジョーはそっと私の手を取り、ジョーの胸に当てる。服を通り越して、ドクドク打つ速い鼓動が伝わってくる。これもきっと、必死で私を抱いて階段を上がっているからだ……

 ジョーは甘い瞳で私を見て、ちゅっと額にキスをする。それで私は、さらに真っ赤になってしまうのだ。 
 私の心臓も、ジョーと同じくらいドキドキいってる。


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