追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
 その瞬間、すぐ近く、この洞窟のすぐ外でおぞましい遠吠えが響き渡った。心臓を掴まれ、恐怖で凍りついてしまうような遠吠えだった。やはり、オオカミは復讐のためにやってきたのだ。
 昨夜は運が良かっただけだ。今夜はどうしよう。

「助けて……」

 縋る人もいないのに、呟いた私の声はふるえていた。

「お願い……助けて……」


「大丈夫だ」

 近くで声が聞こえた。思わず振り向くと、さっきまで眠っていた男性が身を起こしているではないか。しかも目を開いたこの男性、めちゃくちゃかっこいいのだ。
 汚れ破れた服に、土まみれの金色の髪。開かれた濃碧の瞳は、しっかりと私を見つめている。その力強い瞳に、不覚にもどきんとしてしまった。

 彼は立ち上がり、松明を手に取る。

「ちょっと!まだ完全じゃないんだから!」

 止めようとするも、彼は聞いてくれない。松明を剣のように闇に向けながら、私に笑いかけた。

「助けてくれてありがとう。俺のことはジョーと呼んでくれ」

 まるで太陽みたいなその笑顔に、不覚にも見惚れてしまった。

「ジョー……」

 彼の名を呼ぶと、嬉しそうに目を細める。そんなに薄汚れているのに、その美しさが眩しいのですが!

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