暗闇に差し込む一筋の光
「華恋。食べよっか。」
柏木先生が部屋を出てから、真琴先生は私に声をかけた。
「はい。」
返事はしたものの、全く食欲がない。
ずっと箸を持ったまま固まっていると
「もしかして、食欲ないかな?」
と言われ、真琴先生は私の顔を覗き込んだ。
真琴先生には、嘘はつけない。
私は、正直に頷いた。
「いつから、そんな感じだったの?」
いつもは、完食はできないけど半分は食べられる。
けど、ここ最近では1割くらいしか食べられなかった。
「華恋?」
「真琴先生…。香椎先生には、このこと内緒にしててください。」
「え!香椎先生にも、話してなかったの?」
「具合が悪いこと、香椎先生に言ったら私の旅立ちが先伸ばしされると思って…話せなくて…。」
「華恋…。」
私は、ただ施設に残ることが怖かったのかもしれない。
私だけ、皆と離れる。
忘れられる。
みんなといた10年間は、私にとって大切な思い出。
その思い出が全て無かったことにされそうで…
だから、皆と離れたくない。