私の白王子と黒王子
「あんなことがあった後で、平気なわけがないですよね」


類はいつまでも何も言わない私の手を握って言った。


「今から聖奈様におまじないをかけますね」


「おまじない?」


「はい」


——チュッ


私の手の甲に、そっと触れるだけの柔らかいキス。


そして類は私の手をとって、類が口付けた甲を私の唇に当てる。


——チュッ

側から見れば、私は自分の手の甲にキスしている変な子かもしれない。


でも、甲にはまだじんわりと類の唇の温もりと形が残っている気がして。


そこに自分の唇を重ねた私は、間接的にだけど類とキスしているみたいだった。


「これでおまじないは完成です」


さっきまで悩んでいたのが嘘みたいに。


私の頭の中は類のことでいっぱいだった——。
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