どんな君でも愛してる

 こちらをじっと見て、手招きをする。最後だし、何か言ってくれるのかなと思った。謝るとか?

 少し期待して彼女についていくと、隣の会議室に入れられた。そして、振り向いた彼女は鍵をかけて私に言った。

「どこまでご存じか知りませんけど、全部あなたのせいですから。私のこれからの人生、不幸になったらあなたのせい」

「え?な、何言ってんの……」

「私が菫化粧品の社長夫人になりたいとでも?」

 吐き捨てるように言う。やっぱりそうなのね。

「北野さんは結婚が嫌だったらしいって風の噂で聞いたわ。本当なのね……お祝いを言ったのが気に入らないならごめんなさい。でも、知らない人はあなたが円満な結婚退職だと思っているのよ」
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