どんな君でも愛してる

父の意向

 俺は東京へ赴任が決まり、引っ越しが終わるとまずは実家へ顔を出した。

 和風建築の古い家。だが、敷地は広く庭もある。母は庭が好きで季節の花や木をたくさん植え、庭師を入れて手入れさせている。

 春だからいい香りがしてきた。花もたくさん咲いている。いい時期に帰ってきた。

「信也、おかえりなさい」

 仙台支店から東京に異動となり、俺はとりあえず実家のある町田市に帰った。

 ここは東京とはいえ、本社から通うには距離がある。だからあの会社に入った時から俺は実家を出た。

「ああ、ただいま。母さん、身体はどう?」

「ええ、最近はゆっくりさせてもらってるからいいわ。それに、理恵が妊娠してね。最近、孫のことを考えると嬉しくって元気になっちゃったわ」
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