クールな御曹司と初恋同士の想い想われ契約婚~愛したいのは君だけ~
こんな時にも美緒を気遣う千咲の優しさが、苦しい。

美緒は膝の上に置いていた手を強く握りしめ、声を絞り出した。

「ごめんなさい。私のせいですよね」

「そんなこと」

千咲の言葉はそこで途切れた。

その瞬間、やはりそうだったのだと美緒は表情を強張らせた。 

その晩、美緒は自宅に帰ってからも千咲のことが頭から離れなかった。

愛し合う恋人がいるというのに親から見合いを勧められるなど、苦しいに違いない。

日頃から両親と仲がいい千咲のことだ、両親の思いを無碍にできず、胸を痛めているはずだ。

けれどそれ以上に千咲を悩ませているのは、彼女と結婚しようとしない悠真だろう。

悠真は決して千咲をないがしろにしているわけではなく、中途半端な付き合いをしているわけでもない。

むしろ悠真の千咲への愛情は年々右肩上がりで大きくなっている。

妹が聞くには照れくさくなるような千咲への想いを、悠真は平然と口にする。

千咲への深い愛情を隠そうとしないそんな悠真が、美緒は嫌いではない。

それどころか長い付き合いの中でもなれあうことなく千咲への気遣いと愛情を忘れずにいる悠真のことを、美緒は誇りに思っているのだ。

子どもの頃から成績優秀でスポーツも万能、人当たりもよく誰からも好かれる悠真に欠点はほぼ見つからない。

美緒にとって自慢の兄だ。

ただひとつ、美緒への過剰な愛情を除いては。




< 26 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop