冷酷社長と二度目の恋~極上御曹司は、変わらない愛執で愛する彼女を離さない~
車の中。
心也の運転で『プラチナライト』に向かう。
「ねぇ、心也」
「ん?」
「私、静人と哲也、杏にどんな顔をして逢えば…本当にいいのかな?」
「今さらなにを言ってるんだよ、姉貴。『過去』の事はとりあえず、『俺たち』しか知らないし、哲也――テツ兄と杏姉は、姉貴がウチの会社で働いてくれるだけでいいって言ってるから。とりあえず、『秘書』としてシズ兄と向き合ってみて。…そしたら、姉貴も“あいつ”の本性に…」
心也の最後の呟きは、私は届かなかった。
―――私が『この話』持ちかけたのは、約1年前。
両親が亡くなった時、大学を出てそのままそっちで『プラチナライト』会社で働いていた心也から…。
「…姉貴、東京に戻って来る気ない?」
「えっ、東京に?」
「ウチの会社、今年度から『新社長』が来たんだけどさ…」
「ん?」
なぜか、心也が言いにくいそうに口を開いた。
「シズ兄…なんだよね」
私は一瞬、心也の言葉が信じられず…受け入れるのに数秒かかってしまった。
「テツ兄も『副社長』で杏姉は『副社長秘書』をしている。でも…少し困っている事がある」
「…なにに?」
「シズ兄の『秘書』が決まらない。…正確にはシズ兄の『冷酷な厳しさ』に男女問わずに容赦なくて1,2日でギブアップする人が、もう続出してるんだ…」
そう言って、心也が心の底から深いため息をつく。
「……」
「…で、ある日俺が【営業課】にいるって知ったテツ兄と杏姉に声をかけてきたんだ。『心愛を秘書してもう一度シズの傍に…』って、相談された」
「…そんなの、無理だよ…。それに陽太さんになんて言うの?」
―――“長谷陽太”。
私より1つ年上で、心也の課の『先輩』にあたる人だ。
この地に出張中だった陽太さんに男に噛まれる私を助けてもらったのをきっかけに知り合った。
その後、すくに偶然再会して「一目惚れしたんだ」と告白された。
「…誰とも付き合うつもりないです」と断ったが、陽太さんに私が「『男の人』が苦手で…」とだけ伝えると「少しずつでいいから…」と微笑んでくれた。
その微笑みに“なにか”に導かれるように無意識に頷いていた。
こうして、はっきりと言えない(仮)の私たちの関係が始まった。