月とスッポン  奈良へ行く
“大丈夫”だと思わせてくれるそんな手。

大河の一歩後ろを繋いだ手を見ながら歩く。

「どうしました?」

私の視線を辿り、大河も繋いだ手を見る。

「不快?ですか?」

少し不安そうに大河が聞く。

「不快ではないです。ただ手を繋ぐってこんな感じなんだとは思ってます」

ふっと笑う大河が癪に障る。

「だって、手を繋ぐなんて、中学の時に海と繋いだぐらいで、男の人と繋いだことなんてないんだから、しょがないじゃないですか!」

私は何を言い訳しているんだ。

「それは異性として意識してくれているという事ですか?」

意地悪そうに笑う大河。

「いえ。人と手を繋いだ記憶がなくって」

即座に否定してみるが、その否定も虚しい。

「奇遇ですね、私もです」

こんなイケメンでも「そうなの」と純粋に驚く。

「えぇ。腕に纏わりついてくる女性はいますけど、こうやって手を繋いだ事は幼い頃にあるかどうかはだと思います」

そっちかい!

そう思った私は悪くない。

「私の手でしたら、いつでもお貸ししますよ」
「結構です」

「連れないですねぇ」
「使用料高そうなので」

「では、今日は初回サービスという事で」
「なんだそれ」

手を繋いだまま、「あれ美味しそう」「これ何」と話しながら、長谷寺に向かう。

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