迷路の先には君がいた
 彼は一向にキスをして頼んでこない芙蓉にしびれを切らしたのか、膝の上の彼女を抱き上げて寝室へ入った。

「ちょ、ちょっと何してるの」

「さっそく芙蓉を太らせるために甘やかすのさ。俺は優しいな」

「え?え?」

 そう言って、彼は彼女をたっぷりベッドで甘やかした後、お腹をすかせた芙蓉にたくさん食べさせた。ようやくデザイナーのアドレスを教えた鷹也に芙蓉はキスをした。

 彼はとても満足そうだった。

 * * * 

 新しいスワンホテルのデザインは芙蓉の花だった。それを機にお得意様向けで記念宿泊セールを始めた。彼女が戻ったことを知ったお得意様が殺到した。

 彼女はそういった常連客には丁寧にご挨拶し、創業家として四年間の不義理を詫び、特別なお土産を準備したのだった。
 
 
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