突然シンデレラ~王子様は実在しました~
 そんな私が、バイト先には恵まれていたのが救いだ。

 専門学校の授業が終わった後、デザイン事務所で週二日、勉強を兼ねたアルバイトをさせてもらっている。何もかもが新鮮で、何よりも楽しみな時間だ。

 デザイン事務所のバイトがない日には、デザイン事務所の入るビルの一階のカフェでも働いている。みんなに働きすぎだと言われるけれど、家に帰って妹や母の顔を見て嫌味を言われるよりも、充実した時間を過ごせているのだ。

 そんな私に、突然結婚の話が舞い込む。いや、押しつけられたと言った方が、いいのだろう。

 宇田川物産の業績があまり良くないとは聞いていた。社長を解任されるかもしれないと嘆く父に、母の顔色も真っ青だ。父が解任されでもしたら、今の生活を維持することは難しいだろう。

 そんな怯えた様子の父が、親会社の宇田川商事に呼び出されたのだ。顔面蒼白で家を出た父が、数時間後には笑顔で戻ってくる。

 クビではなくて良かったけれど、驚くべき話を聞かされた。
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