EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
店を出て、少しだけ冷える空気に、一瞬だけ肩を震わせた。
夏が近いとはいえ、深夜に向かうあたりは、まだ寒さを感じる。
ビール一杯で酔うほどでもない。
しっかりとした足取りで、駅へと向かう。
――結局、ご飯を食べて終わりだった。
でも、それで良いって言ったんだから、文句は言わせない。
あたしは、交通系カードを取り出し、改札を通る。
数分でやってきた電車に乗ると、ドアのそばに立って、ぼうっと流れていく景色を見つめた。
昨日の今日で、寿和が現れるとは思えないけれど、ストーカーレベルであたしを探していたのなら、駅で待ち伏せられているかもしれない。
いっその事、舞子のところに戻ろうか――。
そう思ったが、秋成さんの存在を思い出し、首を軽く振る。
二人の邪魔になるような事はできない。
――もう、次に現れたら、警察に駆け込もう。
……あたしを必要としてくれるなら、って、思っていたけれど――こんな風になるなら――……。
あたしは、顔を上げて口元を引く。
――大丈夫。
……負けてたまるか。
電車内に最寄り駅到着のアナウンスが響き、あたしは気を引き締めた。
ホームに降り立ち、あたりを見回す。
ひとまず、寿和の姿は見えない。
あたしは、急ぎ足で改札を出て、早足で歩く。
駅の連絡通路を渡ろうと階段を上るが、徐々に足が止まった。
上がった先に見えたのは――寿和の姿。
昨日と違う服だが、まだ、姿は変わっていない。
あたしは、息をのむと、踵を返す。
――まだ、気づかれていない。
階段を駆け下り、駅の表口から外に出る。
こちらからマンションに向かうには、大回りして線路を渡って――歩くと十分近くかかる。
……その間に、アイツがこっちに来ないとも限らない。
――どうしよう……どうする……?
駅前の煌々と光る街並みのネオンを見つめ、あたしは、パニックになりそうな頭を必死で回す。
「――美里ちゃん?」
すると、不意に名前を呼ばれ、あたしは弾かれたように、そちらを振り向いた。
「――……あ……新井……さん……」
驚いたような顔の新井さん――朝日さんの友人が、そこに立っていた。
どうやら、帰宅途中だった新井さんは、あたしの雰囲気に異常を感じたのか、尋ねてきた。
「どうしたの?……何かあったようだけど……」
「――あ……いえ、あの……」
あたしは、答えに迷う。
今の状況を彼に伝えて、どうなる訳でもない。
けれど、すぐに何かを察したのか、あたしに言った。
「良かったら、店、開けるよ。閉店してるんで、外から見えないし、ひとまず落ち着くまで」
「――……ハ……ハイ……」
あたしは、その言葉に甘え、うなづく。
少しだけやり過ごせればいいのだ。
新井さんは、あたしを連れて再びお店に戻ると、裏口の鍵を開けて招き入れてくれた。
「とりあえず、座ってて。ボクは、朝日に連絡入れておくから」
「――いえ……必要ありません」
あたしは、頑なに首を振る。
昨日の今日で――心配はかけられない。
それに、寿和だって、ほとぼりが冷めれば帰るはず。
「でも」
「――大丈夫ですから」
すると、新井さんはあたしをソファに座らせると、自分も向かいに座った。
「ねえ、美里ちゃん。――そうやって、誰も頼らないのは性分なのかな?」
「え?」
「困った時、誰か頼る人はいない?」
あたしは、そう言った彼から視線を逸らす。
――そんなの、もう、とっくの昔にあきらめている。
――アンタは、一人でも大丈夫でしょ。
――頼りにしてるよ、お姉ちゃん。
――もう、お前しか、頼れるヤツはいないんだよ。
次々と、捨てたい記憶がよみがえる。
あたしは、それを振り払うように首を振った。
「美里ちゃん。――……朝日は、頼りにならない?」
「……そんな事は……」
新井さんの問いかけに、あたしは戸惑う。
仕事でも、プライベートでも、誰かを頼りにしたら――あたしは、自分で何もできなくなりそうで。
――そしたら、あたしは、必要なくなってしまう。
「……言いたくないなら、いいけど……何か、トラウマみたいなものがあるのかな?」
その言葉に、あたしは首を振る。
この性分は――もう、いろんなものが絡まって、ほどけなくなった結果だ。
あたしが口を開くつもりが無いのがわかったのか、新井さんはソファから立ち上がると、奥の部屋に入って行った。
それを見送ると、思わずため息をついてしまう。
――……せっかく、助けてもらったのに……。
でも、だからと言って、すべてを話そうとは思わない。
視線を落としたまま、数分。
新井さんは、お茶を入れたカップを持って、戻って来た。
夏が近いとはいえ、深夜に向かうあたりは、まだ寒さを感じる。
ビール一杯で酔うほどでもない。
しっかりとした足取りで、駅へと向かう。
――結局、ご飯を食べて終わりだった。
でも、それで良いって言ったんだから、文句は言わせない。
あたしは、交通系カードを取り出し、改札を通る。
数分でやってきた電車に乗ると、ドアのそばに立って、ぼうっと流れていく景色を見つめた。
昨日の今日で、寿和が現れるとは思えないけれど、ストーカーレベルであたしを探していたのなら、駅で待ち伏せられているかもしれない。
いっその事、舞子のところに戻ろうか――。
そう思ったが、秋成さんの存在を思い出し、首を軽く振る。
二人の邪魔になるような事はできない。
――もう、次に現れたら、警察に駆け込もう。
……あたしを必要としてくれるなら、って、思っていたけれど――こんな風になるなら――……。
あたしは、顔を上げて口元を引く。
――大丈夫。
……負けてたまるか。
電車内に最寄り駅到着のアナウンスが響き、あたしは気を引き締めた。
ホームに降り立ち、あたりを見回す。
ひとまず、寿和の姿は見えない。
あたしは、急ぎ足で改札を出て、早足で歩く。
駅の連絡通路を渡ろうと階段を上るが、徐々に足が止まった。
上がった先に見えたのは――寿和の姿。
昨日と違う服だが、まだ、姿は変わっていない。
あたしは、息をのむと、踵を返す。
――まだ、気づかれていない。
階段を駆け下り、駅の表口から外に出る。
こちらからマンションに向かうには、大回りして線路を渡って――歩くと十分近くかかる。
……その間に、アイツがこっちに来ないとも限らない。
――どうしよう……どうする……?
駅前の煌々と光る街並みのネオンを見つめ、あたしは、パニックになりそうな頭を必死で回す。
「――美里ちゃん?」
すると、不意に名前を呼ばれ、あたしは弾かれたように、そちらを振り向いた。
「――……あ……新井……さん……」
驚いたような顔の新井さん――朝日さんの友人が、そこに立っていた。
どうやら、帰宅途中だった新井さんは、あたしの雰囲気に異常を感じたのか、尋ねてきた。
「どうしたの?……何かあったようだけど……」
「――あ……いえ、あの……」
あたしは、答えに迷う。
今の状況を彼に伝えて、どうなる訳でもない。
けれど、すぐに何かを察したのか、あたしに言った。
「良かったら、店、開けるよ。閉店してるんで、外から見えないし、ひとまず落ち着くまで」
「――……ハ……ハイ……」
あたしは、その言葉に甘え、うなづく。
少しだけやり過ごせればいいのだ。
新井さんは、あたしを連れて再びお店に戻ると、裏口の鍵を開けて招き入れてくれた。
「とりあえず、座ってて。ボクは、朝日に連絡入れておくから」
「――いえ……必要ありません」
あたしは、頑なに首を振る。
昨日の今日で――心配はかけられない。
それに、寿和だって、ほとぼりが冷めれば帰るはず。
「でも」
「――大丈夫ですから」
すると、新井さんはあたしをソファに座らせると、自分も向かいに座った。
「ねえ、美里ちゃん。――そうやって、誰も頼らないのは性分なのかな?」
「え?」
「困った時、誰か頼る人はいない?」
あたしは、そう言った彼から視線を逸らす。
――そんなの、もう、とっくの昔にあきらめている。
――アンタは、一人でも大丈夫でしょ。
――頼りにしてるよ、お姉ちゃん。
――もう、お前しか、頼れるヤツはいないんだよ。
次々と、捨てたい記憶がよみがえる。
あたしは、それを振り払うように首を振った。
「美里ちゃん。――……朝日は、頼りにならない?」
「……そんな事は……」
新井さんの問いかけに、あたしは戸惑う。
仕事でも、プライベートでも、誰かを頼りにしたら――あたしは、自分で何もできなくなりそうで。
――そしたら、あたしは、必要なくなってしまう。
「……言いたくないなら、いいけど……何か、トラウマみたいなものがあるのかな?」
その言葉に、あたしは首を振る。
この性分は――もう、いろんなものが絡まって、ほどけなくなった結果だ。
あたしが口を開くつもりが無いのがわかったのか、新井さんはソファから立ち上がると、奥の部屋に入って行った。
それを見送ると、思わずため息をついてしまう。
――……せっかく、助けてもらったのに……。
でも、だからと言って、すべてを話そうとは思わない。
視線を落としたまま、数分。
新井さんは、お茶を入れたカップを持って、戻って来た。