婚約破棄したら『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』になりました
 あいつら皆仲良くて、他の誰も入れなかった。

 去年まではカイル様って、あたしが好きなタイプの背が高くて爽やかな先輩もいて5人組だった。

 その前の年は、女の兄貴がいて6人組。

 その上には宰相の息子で、超優秀と言われた男も居て、それで7人組だったらしいし。




 卒業していって、人数が減っても、新たに増えることはない。
 近付きたくても、近付けない。 

 排他的、って言うの?
 自分達だけで固まってて、他には誰も要らない、みたいな腹立つやつ。
 そんな何もかもが、面白くなかったのよ。



 だから雨の日を狙って、周りに誰も居ないのを確認して。
 あの女のペンケースを鞄の中に隠したの。
 丁度隣の席になってたし、このチャンスをモノにして近付こうって。


 意外に気を遣うあの女がクラスメイトの持ち物検査を言い出すとは考えられなかったし。
 あたしが盗んだとは絶対にバレないと思ってた。
 ペンケースは図書館のゴミ箱に捨てるつもりだった。



 隣で観察するとあの女は割りと抜けてて、上手いこと言ったら疑う事なく信じる様な気がした。
 また、それが余計にイラつくんだけどね。


 図書館まで同乗させて貰った馬車の中で、女の婚約者を間近に見た。
 それで気付いたの。


 女は背中を丸めて、自分を小さく見せようとして。
 男は反対に背を反らせて、大きく見せようとしてる、って。


 おかしかったな。
 ふたりともお互いに、何とも思ってない友達みたいな顔して。
 お互いに相手に良く見せたくて、本当は好きなんじゃん?って。
 あたし、こういうのすぐわかるからね、おかしくて。


 最初は女と友達になって、カイル様を紹介してほしかったんだけど、こっちの婚約者の方が簡単な気がしてきて。


 それでちょっとね、ほんと魔が差しちゃったんだ。

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