婚約破棄したら『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』になりました

21 貴方の本当を聞かせて

 学園側から論文の不備を指摘されて、初めて頁が抜かれていたことに気付いた。

 自分の過失を認めながらも、ケイレヴのしたことを訴えたが。



 卒業生とは言え、既に彼は外部の人間だ。
 そんな人物に大切な論文を事前に見せたのはライオネルの勝手だ。
 ふたりの家の関係性も学園は把握していた。


 家門間のいざこざに発展しそうな問題に学園は関与したくなかった。
 よって学園からのケイレヴへの確認追求は無かった。
 きっとケイレヴもそうなると予想していたのだろう。



 結果、ライオネルの論文は盗作とは断じられなかったが、グレーの扱いを受けた。


 これまでの成績を鑑みて停学処分でおさまった彼を、宰相閣下は隣国へ留学させる事にして、学園長に必要書類の用意と推薦文を書くように要請(命令)出来たのは、公爵家だからだ。


 また、帰国したライオネルが王城文官に就くことが出来たのも公爵家の力。



「父からはお前の甘さが招いた自業自得だと言われたよ。
 王城で働く文官など、足の引っ張り合いだ、とね。
 息子同士のことで、公爵家と侯爵家、宰相と財務大臣との間に軋轢が起きれば、盗作、停学云々が公になり、却って俺の将来は潰れる、と父は政治的に判断した。
 王城に上がれるように手は打ったが、ここからは自分でケイレヴの弱みを見つけてやり返せ、と発破をかけられた」

「その弱みがルーカス……
 だけど、貴方は自分からルーカスを利用しようとした訳じゃないわ」



 マリナ様は元々の話は聞いていらっしゃらないのね……
 ケイレヴ様は婚約者にも本当の話は聞かせていないんだ。

 
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