冷酷な『黒豚伯爵』に見そめられました 〜双子の美姫の逆転契約婚〜
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「お〜っほっほっほっ! どうしましょう、これは笑いが止まりませんわ」
アイリーンの大げさな高笑いが居間に響く。
紅茶を運んできたメイドが驚いて、がちゃりと大きな音を立てた。
私は怯えた目でうつむき小さく肩をすくめる、そうするしかなかった。
「レティーリアお姉様の求婚相手があの『黒豚伯爵』だなんて!」
「アイリーンや、滅多な事を言うでない。《あんな容姿》でも伯爵様なんだぞ? それにレティーリアを差し出せばこの家の借金を帳消しにするとまで仰っているのだ」
アイリーンを嗜めるようなそぶりを見せているが、それは明らかに伯爵を侮辱する発言に違いなかった。
届いたばかりの書簡——私との結婚の申し出——をテーブルに放り投げ、満面の笑みを浮かべながら整えられた口髭を撫でるのはお父様、ロースロッド男爵だ。