夜の帝王の一途な愛
あゆみは背筋が凍る思いがした。
凌の様子がおかしい。

幸せすぎて、ずっと忘れていた事実。

凌の認知機能障害は現れると言うこと。

冷たい視線、お前誰だと言っているような……

俺はとりあえず仕事に行くことにした。

「着替えるから部屋から出て行ってくれ」

あゆみは、凌の言葉に我に返り、凌の寝室を出た。

手が震えて呼吸が苦しい。

しばらくすると、凌がスーツ姿で現れた。

「悪いんだが、仕事に行く、帰ってくれないか」

あゆみは頭が真っ白になった。
凌が部屋を出ていく時、あゆみは背中を押された。

「鍵を返してもらえるかな」

「あっ、はい」

あゆみは急いでバッグから鍵を出して、凌に渡した。

「なんで、お前が俺のマンションの鍵を持ってるんだ」

あゆみは返事に戸惑った。

私の記憶がないのに、いきなり奥さんなんて言えない。

なんて言えばいいの?

「名前なんて言うんだ」

「あゆみです」

「俺の客か」

「いえ、違います」

「帰るところあるだろう」

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