夜の帝王の一途な愛
おしぼりをおでこにあてて、手を握った。

あゆみは睡魔に襲われて眠ってしまった。

なんで俺はあゆみさんを覚えていないんだろう。

自分を指名してくれたお客は、顔と名前を忘れない。

三年前だろう。

しかも、こんなに酒が弱いんなら、尚更だ。

その時、凌はあゆみの左手の薬指の指輪に目が止まった。

えっ、人妻?

凌はヒカルを呼び出した。

「失礼致します」
「あれ、あゆみさん、麻生さん、あゆみさんに酒飲ませたんですか」

「一杯だけだよ、それにすごく薄めたんだ」

「あゆみさんは、全く飲めないんですよ」

「お前、知り合いか」

ヒカルはしまったと言う顔をした。

「おい、俺に何か隠してるだろう」

ヒカルはしどろもどろになった。

実は凌の中にあゆみの記憶は全くない。

凌にしてみれば、初めまして状態なのだ。

ヒカルは自分があゆみと知り合いだと話した。

「そうか、お前のフィアンセが働いてる店のオーナーか」
「そ、そうなんです」

「三年前にもきたって言ってたが、本当か」

< 196 / 207 >

この作品をシェア

pagetop