夜の帝王の一途な愛
小刻みに震えていた私の手をぎゅっと握ってくれた。この時彼の人生が限られた時間しか無い事を知るすべは無かった。
この時、私は彼を失う事の怖さを感じた。
私より若いから、絶対私が残される事は無いと確信していたが、でも手の震えが止まらない、すごく取り乱していた。
涙が溢れて、どうしていいか分からない。
彼はそんな私を優しく抱きしめてくれた。
「あゆみ、大丈夫だから、あっそうだ、子供作れば一人にならないよ」
私は、彼の言葉を冗談として交わす余裕は無かった。
「私を絶対に一人にしないって約束してください」
私は泣きながら自分の気持ちをぶつけた。
大袈裟かもしれないが、この時嫌な予感が脳裏を掠めた。
「分かった、約束する」
彼は真面目な顔で答えてくれた。しかし、ふっと目を伏せて視線を反らした、その意味する事を分からずにいた。
それから暫く、彼はこの間の様な様子は見せず、平穏な日々が流れた。
当たり前の毎日が嬉しくて、私は彼が寝てからそっと寝室へ行き、暫く彼の寝顔を見る事が日課になっていた。
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