私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
しばらくして私を抱きしめていた主任がゆっくりと身体を起こし、私を押し倒す形で、上から真剣な漆黒の双眸が私を見下ろす。
「誰が、くらげじゃ俺が好きになるわけない、なんて言った?」
「っ、それは……私が……」
私がそう思っているだけだ。
だけどきっと皆そう思っていて──。
「お前が思ってるだけなら、くらげなんてあだ名と一緒にそんな意識捨てちまえ。こっちは思いもよらない事態で必死に理性と戦ってるんだから、変な意識で煽るな」
「!?」
理性と戦ってる?
え、ごめんなさい。思考がついて行かない。
ぽかんと間抜けな顔で見上げる私に、大きなため息が降って来た。
「はぁー……。……俺は、お前のこと、好きだよ」
「────は!?」
耳が、おかしくなった?
今、主任が、私のこと好き、って……。
私は今、自分に都合のいい幻聴を聞いてるの?
それとも──。
「……とりあえず自分の中で自己完結だけはさせるな」
「は、はい」
主任は呆れたように言うと、私の上から退き、隣に座って私の手を引いて身体を起こさせた。
「いいか、よく聞け。俺は、お前のことが好きだ」
「ひゃいっ!?」
幻聴じゃなかった!!
衝撃的な言葉に思わず変な声が出てしまった。
私のことが好き。
確かに聞こえたその言葉に、どんな顔をしたらいいのかがわからない。
なぜ?
いったいいつから?
どこを好きに?
いろんなクエスチョンマークが脳内を埋め尽くす。