私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
「だ、大丈夫です。ていうか、主任がもっと早く連れ出してくれたらこんなに吞むこともなかったんですからね!!」
あ、あれ?
さっきまで怖くて口に出せなかったはずなのに、なんだか止まらない。
自分の意思とは関係なく、理性を素通りして口から飛び出してくる自分の感情。
「いいですよねー主任は。綺麗な女の人に囲まれてイチャイチャしてるだけでよかったんですからー」
「イチャ……っ!! いや、水無瀬、それは──」
「どーせ一緒に泊まるなら綺麗でセクシーなあのコンパニオンさん達みたいな人が良かったって思ってるんでそぉー!!」
「は!? おまっ、何言って……!?」
あぁ、ダメだ、止まらない。
もはや自分が何を言いたいのか、何を言っているのかわからないし、自分で自分が制御できない。
確かなのはそう、ただふわふわとしているだけ。
「……私みたいな陰気なくらげ、罰ゲームぐらいでしか告白もされなければ意識もされないですもんね……。本当……どうせ、わたしなんて……。こんなくらげじゃ、主任に好きになんてなってもらえるはず、ないですよね」
「っ……!? お前……」
ふわふわとしていても、胸の痛みだけは感じられる。
自分が嫌いだ。
自信のない自分。
可愛げのない自分。
弱い自分。
今みたいな自分。
頭が重い。
やっぱり吞みすぎたんだろうか?
頭と共に瞼まで重くなって、閉じてしまいそうなそれを必死でつなぎとめる。
「……それ、誰が言った?」
「へ? ひゃぁっ!?」
虚ろな意識の中、私の布団に入り込んできたのは、紛れもなく主任で──。
私の上に馬乗りになった主任によって、私の身体はすっぽりとその長い腕で抱きしめられてしまった。