私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
突然私の名前が呼ばれて、たくさんの人の目が私に集中する。
さっきまでの非じゃないほどに。
だけどそんなこと気にならないくらいに、私の頭の中は今のこの現状を理解できていない。
なに?
この話の流れから私の名前が飛んでくるってどういうこと?
私何かやらかした? まさか優悟君の如く公開説教!?
考えてみても何もその理由が全く思い浮かばない。
すると雪兎さんは壇から降り、戸惑う私の手を引くと、再び壇上へ私を連れて上がった。
どう意図なのかわからないままにおずおずと雪兎さんを見上げると、雪兎さんが優しく微笑んだ。
そのとろけるような甘い笑みを見た女性陣から黄色い声が上がる。
それはそうだ。
今まで眉間の皺がテンプレだった雪兎さんの笑顔なんて、職場では見られることが無かったのだから。
そして────。
「……虫は、一掃しないとな?」
「へ?」
私にだけ聞こえるような声でそう言うと、雪兎さんは私の手を取ったまま、その場に跪いた。
そう、まるでおとぎ話の騎士のように。
会場からは女性陣の悲鳴が上がり、優悟君の口があんぐりと開いたのが横目に見えた。
「水無瀬海月さん。俺と、結婚してください」
「!?」
はいぃぃぃぃぃいいい!?