私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
 波乱のパーティから一年。

 あれから雪兎さんは変わらず会社で働き続け、春、新年度から新しく社長に就任した。
 雪兎さんが社長になって忙しさが増しても、彼は変わらずに私のことを大切にしてくれたし、私も、雪兎さんを支えようとそれまで以上に仕事に向き合った。

 そして今日。
 私たちはたくさんの証人が見守る中、変わることのない確かな愛を誓い合った。

 誓いのキスがファーストキスになろうとは、一年前は思いもしなかった。

『結婚まで口へのキスはしない』
 そんな今時珍しい堅物な雪兎さんの方針で、私達は健全なお付き合いを重ねてきた。

「ふふっ」
「どうした、海月」
 入浴を終えて新居の寝室に足を踏み入れた雪兎さんが、ベッドに座って思い出し笑いをする私を見て首を傾げた。

「誓いのキスの後の雪兎さんの顔を思い出してしまって。ふふっ」
「笑うな」
 誓いのキスで赤く染まった雪兎さんのあの顔は、私にとって一生忘れられない思い出になった。

「雪兎さん、可愛かったです」
「お前なぁ……そういう事言ってると──」
「ひゃぁっ!?」

 ドサリ──。

 私の身体は雪兎さんによって押し倒され、ふかふかのベッドの上へと沈んだ。

 目の前には色気を孕んだ雪兎さんの顔。
 胸元から覗く白くたくましい胸板。
 ほのかに香る私と同じシャンプーの匂い。

「もう、我慢はしないから。覚悟しろよ? 花嫁さん」
「~~~っ」

 そして私は、この不器用で分かりづらい溺愛にとろかされるのだ。

 永遠に、変わることなく。


END
< 58 / 58 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:106

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
私はフェブリール男爵家の次女として生まれた。 名は──もうなんだったか、忘れてしまったけれど。 皆、私を“出涸らし”と呼ぶ──。 姉のローゼリアが聖女として認定されてから、いつしか名前すら呼ばれることなく、家事を一手に引き受けてきた彼女は、お風呂場の掃除中に滑って頭を打ち、前世を思い出した。 「生まれてきて……ごめんなさい……」 涙を流し今世に絶望する彼女は、昔姉に聞いた森に住む怖い魔法使いの話を思い出す。 そして思い至った。 そうだ、来世に期待しよう。──と。 嫌というほど叩かれた。鞭でぶたれた。もう痛いのは嫌だ。 できるだけ痛み無く、楽に、綺麗に来世に行きたい。 彼女は森へと旅立った。噂の悪い魔法使いに、【痛み無く、楽に、綺麗に】来世へ送ってもらうために。 悪い魔法使いと言われる若き公爵オズ・ジュローデルと出会い、彼に【セシリア】という名前をもらい、居場所をもらった彼女は、そこでオズやケットシーの【まる子】、グリフォンの【カンタロウ】と共に、魔法薬茶の薬草を育てながら人々と触れ合い生きていく。 やがてセシリアの本当の力が目覚めて──? 出涸らしと呼ばれた死にたがり令嬢と、クールで実はうぶな悪い魔法使いの、ハートフル恋愛ファンタジー。 セシリアの明るい来世は──!? 他サイトでも連載中。
そのほくろに恋をした
景華/著

総文字数/9,994

恋愛(純愛)11ページ

超短編!フェチから始まる溺愛コンテストエントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
☆主要登場人物☆ ●雛形 雪(ひながた ゆき) 23歳 総務部勤務のOL。明るくマイペースで、妙に肝が据わっている。 昔から「口元のほくろ」に異様なフェチを持っており、水川蓮の口の端にある小さなほくろに一目惚れした。 ただし本人いわく、「社長本人というより、ほくろが好き」。 恋愛経験は少ないが、好きなものへの熱量だけは異常。空気を読めないようでいて、人の感情には敏感。 ●水川 蓮(みずかわ れん) 29歳 大企業・水川ホールディングスの新社長。先代である父の急逝により若くして会社を継ぐ。 冷徹・合理的・完璧主義。女性は自分の顔や地位しか見ていないと思っており、徹底して距離を置いている。 右の口端に小さなほくろがある。 ●沖田 修二(おきた しゅうじ) 23歳 営業部エース。雪の幼馴染で、長年片想い中。 面倒見が良く優しいが、雪が蓮に近づくほど焦りが強くなり、蓮に対抗心を抱く。 ●片川 綾音(かたかわ あやね) 29歳 秘書課のマドンナ。財閥令嬢で美人、仕事も有能。 ハイスペックの蓮に強い執着を持ち、「自分こそ社長の隣に立つべき女」と考えており、雪を見下している。 しかし次第に、蓮が雪にだけ見せる表情に気づき始める。 ☆あらすじ☆ 社長の急逝により、若き新社長・水川蓮が就任した。クールだが見目の良い彼に社内が沸く中、総務部の雛形雪だけは、彼の“口元のほくろ”に一目惚れする。 「社長本人には興味ありません! 好きなのはそのほくろです!」 誰もが顔や地位しか見ない中、雪だけは蓮が嫌っていたほくろを無邪気に褒め続ける。最初は呆れていた蓮も、まっすぐで変わり者な雪に次第に心を許していく。 しかし、婚約スキャンダルや周囲の思惑によって二人はすれ違ってしまう。傷つきながらも互いへの想いを自覚した二人がたどり着く恋の結末とは──? “ほくろフェチ”女子と孤独なクール社長の、じれったくて甘いオフィスラブコメディ。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop