【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 ジョシュアとランドルフは幼馴染と聞いている。恐らく兄のような心境で、ランドルフの突然の結婚を心配していたのだろう。
 リーゼは彼を安心させるように微笑みを浮かべて首を横に振った。

「いえ、そんな、ランドルフ様はとても良くしてくださっています」
「本当か〜?俺に気を遣わなくていいんだぞ。アイツ無愛想だし、正直面倒くさいだろ?」

 なんとしてでもリーゼの愚痴を聞き出したいんだろうか。食い下がるジョシュアにリーゼは苦笑を漏らす。

「いえ、本当に。不満なんて何もないですよ」

 あるとすれば、ただリーゼが勝手に恋心を募らせて苦しくなっているだけだ。

「本来なら私は結婚できるような状況ではなかったんです。それをランドルフ様に拾っていただけて、しかも妻という役割を通じてあの方のお役に立つことができて……不満なんてあるわけがないです。これ以上、望むことなんて何もありません」

 嘘だ。
 彼との距離が近づくほど、契約結婚という枠組みを超えた関係になりたいと浅ましく望んでしまっていた。

 愛されたいと願う己の心と相反する言葉を紡ぐと、リーゼの心臓がギュウっと握りつぶされたように痛んだ。
 ぐちゃぐちゃにほつれる胸の裡を隠すように、リーゼは取り繕った笑顔を貼り付ける。
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