【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
(まあ、働くのは好きだからその点に不満はないんだけれど。働いてた方が白い目で見られないし)
 
 幸いにもエルドラシア王国は学問を尊ぶ国。女性であっても、国の官途や研究員として奉職することは名誉であるとされている。
 そのため行き遅れのリーゼも、肩身の狭い思いをすることなく生きていける。
おまけに給金をいただくこともできるし、いいことづくめだ。
 両親に泣きつかれて、給金の半分を仕送りしていても、望まない結婚をするよりずっといい。いかがわしい目でリーゼを品定めする三十も四十も年上の老貴族の後添えになったり、愛人を侍らせながら爵位目当てで仕方なく娶ってやると豪語してくる脂ぎった商人に嫁ぐよりもよっぽど。

「なるほど。確かにろくでもない男に嫁いだところで幸せなど望めないからな。働くことを選んだ君の判断は正しい」
 
 多くは話さずともランドルフはリーゼの家庭の事情を察したようで、重々しく相槌を打った。

「じゃあ、結婚の意思自体はあるということか?」
「ないわけではないのですが……」

 なんの瑕疵もない普通の貴族男性が、持参金ゼロの行き遅れ(しかも地味)を身一つで嫁にもらってくれる、なんて奇跡は起きるはずもない。リーゼは苦笑いで言葉を濁した。
 ランドルフは自らの顎をひと撫ですると、ふむ……と考え込むように首肯した。
< 12 / 170 >

この作品をシェア

pagetop