【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
「……旦那様、リーゼ様は無事であらせられます。先程お父上であるスターリング子爵様からご連絡があり、お母上が病に臥せられたとのことですので、お見舞いに出かけられましただけでございます」
「は?見舞い?じゃあ彼女は家出をしたわけではないのか?」
「はあ……最初からそんなことは申し上げておりませんが……」

 マーティンの呆れた目つきにランドルフはムッとした。

「お前の言い方が紛らわしいんだ。そうか、出て行ったわけではなかったのか……」
「家出をされてもおかしくないかとは思いますけどねぇ」

 ほっと安堵の息を漏らしたのも束の間、そんな刺々しい声が背後から聞こえてくる。
 振り返ると、エイダがじっとりとランドルフを睨め付けていた。彼女は眦をキッと上げ、ものすごい勢いでランドルフに詰め寄った。

「坊ちゃま!なんですか、あのリーゼ様の手首の跡は!一体どんな無体を働かれたというのですか!エイダは坊ちゃまをそんな鬼畜に育てた覚えはありませんよ!!」
「それは……リーゼにはすまなかったと思っている……」
「ああ、お可哀想なリーゼ様。昨日はずーーっと塞ぎ込んでいらっしゃって……。翌朝も目が腫れるくらい泣いておられましたわ。ああ、おいたわしい。それもこれも全部坊ちゃまのせいでございますよ!」

 ランドルフの乳母でもあったエイダは、いわば母親代わりだ。普段は口うるさいと思うものの、今日ばかりは全て彼女の言う通りなので何も言えない。
 ランドルフは真剣な面持ちで首肯した。
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