【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 そこまで考えて、ランドルフはいやいやとかぶりを振った。
 そんなことをしても得られるのは同情心だけだ。金と上司への義理で彼女を縛り付けて、一体何になるというのだ。

 ランドルフは噛みちぎれそうなくらい強く己の下唇を噛み締めた。
 彼女が望むのなら、別居もやむを得ない。

(だが、一からやり直すことはできないだろうか……)

 今度こそ、本当の夫婦として。

 毎日、彼女に贈り物を贈って。彼女が好きな本を読んでみて、同じ世界を共有するのもいい。彼女の世界に触れて、その上で愛を告げよう。
 彼女の心を手に入れるためならなんでもしよう。

 そう決意したランドルフの耳に、何やら色々話していたらしいマーティンの声がようやく耳に入り始めた。

「――リーゼ様からは病状がわかったら連絡をすると……」
「病状?まさか彼女は病に冒されていたのか?!」

 驚愕の情報がもたらされ、ランドルフは目をかっぴらいた。

(それなのに俺は、リーゼにあんな鬼畜の所業を……一度死ぬべきだ……)

 頭が真っ白になって途方に暮れる。
 呑気に贈り物の算段をつけている場合ではない。すぐに王都で一番設備が整った病院に入院の手配をしなければ。
 
 早速踵を返そうとしたその時、目の前のマーティンの眼差しが妙に生ぬるいことに気がついた。
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