【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
「すまなかった、リーゼ。許されないことだとは、わかっている」
「…………」
「俺は、相手が誰であろうと、君が他の男に笑いかけるのが許せなかったんだ。醜くも嫉妬していた。こんな感情を君に抱くべきでないということも理解している。だが……」
「……え?ちょっと待ってください。嫉妬、ですか……?」

 思いもよらない単語が聞こえてきて、リーゼは耳を疑った。
 まさか、嫉妬だなんて嘘に決まっている。彼がそんな感情をリーゼに抱くはずなどないというのに。
 リーゼが口をぽかんと開けながら目を丸くしていると、握られた手にギュッと力が込められた。

 何度見惚れたかわからない蠱惑的な色をしたランドルフの瞳が真っ直ぐに、迷いなくリーゼを射貫く。

「ああ、そうだ。俺は君が他の男の名を呼ぶことも、笑いかけることも許容できない。君の全てを独占したいと思っている――――愛しているんだ、リーゼ……」

 時が止まったようだった。
 相槌も、瞬きも、そして呼吸すらも忘れてしまった。
 ゼンマイが切れたように脳の機能が停止していき、何も考えられなくなる。

 それでも感情だけはリーゼの内から溢れ出て。足元から高まった水位が頭の先まで到達し、器に収まらなくなった雫たちが次々と眦からこぼれ出していく。
< 142 / 170 >

この作品をシェア

pagetop