【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 戦闘の疲労を感じさせない軽い身のこなしで馬上から降りたランドルフが、リーゼに向かって手を差し伸べた。その手を取ってリーゼも馬から降りようとしたのだが――地面に降り立つ前にそのまま横抱きにされ、彼の腕の中にスッポリと収まる事態に陥った。
 どうしてこんな体勢になったのかわからず、リーゼは目を白黒とさせる。

『あ、あ、あ、あの、団長?!どうしてこんな?!』
『さっきから体に力が入っていなかっただろう。慣れない道を歩いて怪我でもされたら困る』

 ランドルフはパキパキと小枝を足で踏みながら、迷いなく突き進んでいく。リーゼを降ろす選択肢はないらしい。

 ドレスを着込んだリーゼを抱えても、ランドルフの体幹がブレることはない。服越しでもランドルフの腕の逞しさを感じる。
 どうしようもないほどの羞恥が押し寄せてきて、リーゼは赤らんだ顔を隠すように俯いた。

『あの……すみません……重くて……』
『全く重くなどないから気にするな。むしろ君は細すぎる。もっと食べた方がいい』
『は、はい……』

 会話はそれきり途切れた。
 でもリーゼを抱きしめるランドルフの腕の感触が、ずっと肌に残っていた――
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